「そう……、優花がそんなこと言ったのね……」
「俺、優花に嫌われてなかったんだな……」
現在は昼休み。
俺は生徒会長と原木君を校舎裏に呼んだ。
そして、今朝彼女と話した内容をそれぞれに伝えた。
「原木君、ちょっと」
呼ばれて近づいてきた原木君の顔を、俺は思いきり殴った。
原木君は勢い余って地面に手をついた。
「ちょっと何してるの!?」
「これは優花と俺からだ」
俺は原木君に手を差し伸べた。
「何だそりゃ。妬けるな」
原木君はそう呟いて、俺の手を借りて立ち上がった。
「もう……、男の子って分からないわ。優花も優花で、この2人に何をしたのかしら」
生徒会長は呆れたように言った。
そして俺達3人は空を見上げ、暫く見続けた。
彼女は俺達を見て笑っているに違いない。
「そういえば、結局優花のやりたかったことは何だったの?」
「いくら幼馴染みでも教えません。優花との秘密です」
「私は一応、貴方達の先輩よ?」
生徒会長に脅されたが、俺は絶対教えなかった。
「で? 優花とはどうなった?」
「教えない」
原木君も俺に質問責めしてきたが、俺はシカトした。
俺達は暫く、彼女の話をした。
そして、時は夏休みへと入った。
花壇は無くならず、ベンチは別の場所へ置くことになった。
校舎裏に生徒が来るようになったのは、彼女が花を植えてからだそうだ。
綺麗な花を見に、昼休みには沢山の生徒がやってくる。
そのことを俺は、夏休みに入ってから生徒会長に聞いた。
彼女は学校に、校舎裏に、存在を残していった。
蝉が鳴く中、俺は今日も彼女との約束を果たしに、校舎裏へ行く――。
校舎裏には秘密がある、を最後までお読み頂き、有難うございます!
誤字脱字はあれば徐々に直していきます(^^)
さて、卒業式の日に花壇の土を掘ってということで、番外編として卒業式の日のことを書きます。
あとがきの続きに章を変えて書きますので、よかったら読んで下さい(^^)
かなり自己満な作品になったかもしれませんが、最後まで書けて良かったです!
3月1日――。
俺は今日、高校を卒業した。
原木君と他愛ない話をして別れ、俺は校舎裏へと向かった。
女郎花の押し花のしおりを、ポケットに入れて。
「優花、来たよ」
俺は花壇に向かって呟いた。
そして、スコップで土を掘る。
彼女からのプレゼントを貰う為に。
カツン。
何かに当たる音がした。
彼女からのプレゼントを見つけると、自然と土を掘る手が速まった。
プレゼントは赤色で、クマのイラストが入った缶の中に入っている。
箱を開ける間、俺の胸はドキドキしていた。
中には手紙と、何かの種が入っていた。
「朝顔の……種?」
種は箱の中に戻し、俺は手紙を読んだ。
『親愛なる春樹へ
卒業おめでとう!
あたしも一緒に卒業したかったなあ(笑)
春樹、あたしと離れてからもう3年経つね。
彼女は出来ましたか?
春樹のことだから、どうせ彼女は作ってないと思うけど、いつまでもあたしを引きずらないでさっさと彼女作りなさい!
……なんて言いながら、朝顔の種をあげてるあたしもおかしいよね。
春樹は花言葉を知ってる?
朝顔の花言葉にはね、“固い約束”があるんだよ。
だから朝顔を選んだの。
春樹が高校を卒業しちゃっても、校舎裏での出来事は秘密だよ!
約束!
だから朝顔の種をあげる。
それをどうするかは春樹の自由だけど、もし、まだあたしのことを好きでいるなら、朝顔を育てて下さい。
あたしのこと、忘れないで下さい。
春樹が大好きです。
ずっとずっと、大好きです。
死んだあたしを愛してくれて有難う。
幸せだったよ。
さよなら。
星野優花』
いつの間にか、手紙は涙で濡れていた。
でも、その前から濡れた跡があった。
彼女の涙だ。
「何だよ……、物に触れるんじゃん。馬鹿野郎」
彼女に触れられなかったこともまた、彼女なりの愛だと思う。
触れていたら、きっと俺は余計に彼女と離れるのが嫌だったに違いない。
最後に触れたのは、俺達が求め合ったからだ。
彼女も、俺に触れたいと思ったから。
「知ってるか? 俺達、最後の最後まで繋がってるんだぜ。好き合ってるんだぜ」
そう言って俺は、ポケットからしおりを出した。
「女郎花の花言葉は“約束を守る”。生徒会に頼んで、校舎裏に女郎花を植えて貰ったんだ。生徒会長が校長先生に一生懸命頼んでた。優しい幼馴染みだな」
俺はしおりをギュッと握った。
彼女の為に、女郎花を選んだ。
「俺、まだまだ暫く優花のこと好きだ。優花のことは一生忘れない。毎年、女郎花が咲いたら優花に会いに、校舎裏へ来るよ。約束する」
俺は土を戻し、下校時刻まで校舎裏にいた。
これから花壇は、生徒会が面倒を見ることになった。
彼女の幼馴染みが生徒会長だった時に決まった。
彼女の幼馴染みの、願いだった。
でも、例え俺が花壇の面倒を見れなくなっても、俺と彼女は繋がっている。
朝顔と、女郎花で。
秘密で、固く繋がっている。
校舎裏には、俺と彼女にしか分からない、大切な大切な秘密がある。
おわり