彼女は花壇を指差しながら、口を開いた。


「卒業式の日、ここの花壇の土を掘って。あたしから春樹に、プレゼントがあるから。ただし、卒業式までは絶対に見ないでね」

「分かった!」

「有難う、春樹。さよなら」

彼女は満面の笑みで俺を見た。


「さよなら! 優花、お前の笑顔が大好きだ!」

「うん! 分かった!」

彼女は消える最後の最後まで、俺に笑顔を見せた。

俺も彼女に、最高であろう笑顔を見せた。

でも彼女が消えた途端に、俺の目からは大量の涙が溢れた。


「優花……っ、優花……!」

彼女の名前をひたすら言い続けた。

勿論、彼女からの返事はもうない。

彼女は、俺の前から消えた。

この世から完全に姿を消した。

それが悲しくて、俺はチャイムが鳴っても授業が始まっても、暫く校舎裏にいた。


「優花、大好きだ」

俺と彼女の秘密の時間が、終わった。