「私がいなくなったら、水やりとかする人がいなくなるでしょ? だから、花壇を無くすって言われたの」
「そうだったのか……」
「でも、春樹が水やりを続けてくれるなら、花壇を壊さなくて済むの。お願い」
彼女は、花壇を無くしたくないんだ。
だから俺の前に現れた。
彼女は、俺を選んでくれた。
「やるよ。夏休み、やるって約束したじゃん。夏休み終わってもずっとやる」
俺は彼女に二ッと笑った。
彼女も俺に、嬉しそうに微笑み返してきた。
彼女に恩返しがしたい。
だから今度は、俺が彼女に協力する番だ。
「これで安心して行けるよ」
「――優花!」
彼女がどんどん透けてきた。
「もうお別れの時間だね……」
「優花っ! 待ってくれよ!」
俺は彼女の手に触れようとした。