「春樹。何で春樹だけにあたしが見えるか分かる?」
「何だよ急に……。そんなの知らねえよ」
彼女は涙を拭き、にこっと微笑んだ。
「春樹に見えますようにって、あたしが願ったの。願って願って願って、春樹に近づいたら、春樹に見えた」
「どうして……俺なんだ?」
彼女は花壇に近づいていき、花壇の前でしゃがんだ。
「春樹に、あたしがやりたかったことをして欲しかったの。春樹が校舎裏に来た時、この人なら絶対やりとげてくれる、そう思った」
「やりたかったこと……?」
俺がそう聞くと、彼女は水やりの道具を出してきた。
「水やり! 花壇の雑草抜きや水やりを、卒業するまでやって欲しいの!」
「でもこの花壇、もうすぐ無くなるって……」
彼女は首を左右に何度も振った。