「春樹」
「ん?」
彼女が手を離した瞬間、温もりが消えた。
「原木とのこと、話してもいい?」
「……良いよ」
本当は少し怖いから聞きたくなかった。
もしかしたら彼女は、原木君が好きだったのかもと、考えてしまうから。
でも、彼女が好きだからこそ、彼女の全てを知りたい。
彼女と原木君の関係を知って、すっきりしたい。
「原木はね、いつもあそこからあたしのことを見てたの」
そう言って彼女が指したのは、俺の教室があるの廊下だった。
そういえば、廊下から校舎裏が見えてたんだっけ。
「毎日話しかけてきてうっとうしくて、あたし無視してた」
うっとうしい。
それが本心とは思えなかった。
本当は、話しかけてくれる人がいて嬉しかったんじゃないだろうか。