「拳万って、万回の拳骨って意味。
万回拳骨を受けても尚、約束出来る?
出来なかったら針を千本飲ませますよっていう意味なの。だから、そんな簡単に、」


「受けたやん」
「え?」

「もう充分、万回の拳骨受けたやろ。俺も唯も。指、見してみぃよ」

溜息をついて秋が起き上がり、私の右手首を強引にさらっていく。

月明かりの中、私の人差し指と中指に残る淡い桃色のラインを、目を凝らすように見てから…

ぎゅっ、と。

両手で祈るように私の手を握りしめた。