母が亡くなってすぐに、父が私を迎えに来た
・・・愛人関係だったのをもみ消すために、あたしに引き取り手がいないのをいいことにもっともらしい口実をつけて
本当は行きたくなんてなかった
でも、突然起きたことに頭と心がついていかず何もすることができなかった

父の家で、当たり前のようにアタシは歓迎されることはなかった
むしろ嫌われていた
仮の母は、あたしを汚いようなものを見るような視線を向けてきた
それだけじゃない。触れようともしなかった

使用人も何処かよそよそしかった

なぜあたしが、こんな仕打ちを受けなければならないのかわからなかった
でもかといって身寄りのないあたしが逆らえば、この家から追い出されるのは目に見えていた

幼いあたしには、一人で生きていくすべなど知らなかった




住む場所が変わっても学校は変わらず、そこが唯一のアタシの場所だった
友達と話しているのは・・・とても心が癒される
悲しいことも辛いことも、ここに行けばほんのひと時だったとしても忘れられた


でも、すぐにそのあたしの癒しの場も崩壊した

「ゆずきちゃんってさー。金持ちのおうちのこどもだからってちょーしのってるよね」

「わたし、ママがおはなししてるのきいたんだけどさーゆずきちゃんのママ、ゆずきちゃんのことすてたんでしょ?あいされないこどもは、あわれだわって言ってたよ」

「おかあさんがしんじゃって、かなしがるのはしょうがないけどさーなんか‘えんぎ’っぽいよね」

「あたしもう、ゆずきちゃんとおはなしするのやめるー」

「ぼくもそうしよー」

「ゆずきちゃん、そういうことだからこんどからあたしたちにちかづかないでね」


クラス全員から言われた言葉のほんの一部
・・・もう全部なんて覚えてない
ただ、目の前が真っ暗になった気分だったのはしっかりと覚えている


このころから、あたしの心は徐々に壊れていった