「良かった………」
小さく呟かれた言葉。
近くで呟かれているのに音のない倉庫で遠くに聞こえた。
「まおーさん、帰ろ?」
ぎゅうぎゅうに抱きしめられた腕の中からスポンッと頭を出して魔王さんを見上げて笑う。
そんな私に呆れた笑みを浮かべた。
「あぁ、帰ろう。」
周りに伸びている人達を見てどーしよーかと思ってたら、魔王さんがいい。と言って
「エルが来るから、大丈夫だ。」
「逃げちゃわないですかー?」
ちろり、と彼らを一瞥して魔王さんは私を抱えて歩く。
えぇ、皆様のご想像を見事に裏切る荷物抱っこです。
世の中の女性の皆様、この状況でこれは無いですよねっ!
どーおもいますかっ!
「煩い。黙れ。」
こんな所で俺様発揮しなくてもー、
ぶーぶーと文句を胸の内に秘めて。
ふと、目に入ったものを慌てて指差す。
「魔王さんっ!荷物、荷物!」
「あ?」
何かの台の上に置かれた買い物袋を指差す。
いっぱい買ったのにー!!
置いてかないでー!
バタバタと暴れる私にまた溜め息をついてゆっくりと台に向かって歩く。