ガン、と音がして誰かが入ってくる。
殺気を隠す気配もなく腰にあるであろう剣に手をかけている。


うーん、援軍かなー?
めんどくさいなー。


はい、ごめんなさい。
ゆーかいされて怯えるようなお約束の女の子じゃなくて。
手に鉄筋持ってる時点でアウトだけど。


では、隊長っ!
行ってきます!


風に背を押されるようにして一目散に駆ける。
先手必勝、虚を突くかんじで行ったのに易々と受け止められて少し悪態をつく。



月明かりに照らされて目の前にいる人のあの、黒髪が見えて………


「まおーさん…………?」

「なつか?」


次に繰り出そうとしたワザを寸止めして呟く。


「なんで?」
 

ーーーなんで、ここにいるの?


呆然とする私に溜め息をついて、構えていた剣を鞘に戻して私を抱き締める。



カラン、と手に持っていたそれを落としてコロコロと転がる音を聴く。


「まおーさん、苦しい。」


ぎゅうぎゅうと強い力で抱きしめられて中身がブチュリ、とでそーなんですけど!


「少しは黙れ。」


溜め息をと一緒に吐かれた言葉には明らかに安堵のものが混じってて思わず首を竦める。
何となく、嬉しくてくすぐったい。