***


馬をけって、夜の街並みを駆けていくと呼び止められた。


「そこのお方っ!そこのお方っ!」


あまり若くはない声。
正直、急いでるからあまり構いたくはないのだが、


「………なんだ。」

「騎士様、でいらっしゃいますよね。」


年は30後半くらいの女が焦ったように、でもゆっくりと落ち着きながら話す。


「………あぁ、そうだ。」


俺は騎士ではないが、そもそも国王がこんなところにいたら大変だろう、とエルから言伝てを受け取ったところだ。


「……これより先に行ったところに、若い女の人がぐったりと倒れていたのを見たのですっ。」

「……わかった、ありがとう。」

ガン、と頭を殴られたようだった。もしやそれがなつかだったら―――?
またしても後悔の波が押し寄せる。


「くそっ!」


思わず悪態をついてしまう。
さっきよりも速く、速く、走った。


すると、目の前に見知った顔がオロオロと立っていた。
そう、あの―――。


「ゼミュルダッ!」


弾かれたように後ろを振り返り俺を見て安堵の表情になるも、一瞬にして青くなる。