「なにっ!?まだなつかたちが帰ってないっ!?」
ガタンッと机を叩く。
あまりの剣幕に文官が青ざめてるがそんなん気にしてはいられない。
「もう、真の刻だぞ?」
「付き添った侍女も帰ってきてないらしいです。宵の刻までには帰る、と告げていたらしいのですが………」
エルが焦ったように報告する。
「……っち、城下町へ行く。エリダを呼べ。後は、お前がついてこいっ!」
外套を羽織り、護身用の剣を持つ。エルが文官に何かを伝えている。
「陛下、マーシャの店の前で夕の刻くらいに見たと!」
「わかった!イルを飛ばす!」
「わかりましたっ!」
思いっきり扉を開け、馬小屋に向かう。その間に指笛を吹いてイルを呼ぶ。
「くそっ、」
思わず悪態をついてしまう。
誰に、誰かにだ。
なんで2人で行かせたのだろうか。
1人くらいつければよかった。
後悔がぐるぐるとまわり出す。
そんなん無駄だと思っても、無意識に思ってしまう。
だから、せめて。
「―――無事でいてくれ。」