目の前には軍服で苦笑いをしているエルさんがお姉様の横にいた。
「こら、なつか様に名乗ったのか?」
「あら、まだだったわ。スヒィリナと申します。スヒィーと読んでくださいな。」
「はいっ!勿論でございますっ!!」
「お前………」
魔王さんは私を呆れた顔で見ていたけれど、そんなのはお構い無しっ、ですよ。
「エルさんの奥さんですかっ!?」
意気揚々という私の頭を撫でて、可愛がるスヒィーさん。
「ねえ、陛下。私にこのお姫様を貸してくださらない?」
「マヂですかっ!!」
キャッキャッ、とはしゃぐ私を見て魔王さんは溜め息をついて、
「わかった。」
「やった!!ありがとーっ!!」
魔王さんにギュって一瞬抱きついてからスヒィーさんの手をとり、壇上を降りていく。
その後ろで、魔王さんが笑っていたのはエルさんとスヒィーさんが知っていて後日、教えてくれたのだった。