「部屋は気に入ったか?」


不意に魔王さんが話しかけてきて少し驚く。


「………うん、気に入ったよ。」

こんな豪華な部屋、見たことないし。
付け足したような感じになってあれ、と思うけどまぁいいや。



魔王さんはそうか、と言って優しく笑った。
なんか、その笑顔がやけに普通であれ、と思った。


そう、同年代の男の子が笑うみたいな感じ。



でも、何となく安心出来て。
ホッとして。


まだ、何にも知らない異世界の、わたしをさらったひと。





まだ、名前も知らないこのひとのこと。
これから、知っていけばいいんだから―――



「―――よろしくね、」


魔王さんに向き直って、挨拶を述べる。
勿論、笑顔で―――。







そうして、異世界のお城での奇妙な生活が始まったのです。