額に汗をかき、涙を流して。
辛そうに喘いでいるのです。
そんなとき、いつも陛下が隣にいてくださったので安心してたのですが。
最近、ご令嬢に付きまとわれてなつかさまの元へと来ることが出来ずにいるらしいのです。
エル様からの情報だとディーゼル伯爵家のご令嬢、ビクトリア様が積極的なアピールをしているだとか。
ディーゼル伯爵家の当主といえば、あまり仕事が出来ない上に向上心だけは強いお方。
先代当主、お父上はとても素晴らしくまだ位もないディーゼル家を伯爵の位にまであげたのですから随分と頭の良い、お優しいお方でした。
なのに、婿養子にきた人があれであればこの落ち込みようも頷けます。
伯爵の中でも最高位にあったディーゼル家は今財政の危機に瀕しているのです。
だからこそ、王族との血縁が欲しいのでありましょう。
なつかさまは聡いために今自らが置かれている立場を曖昧にですが理解しているのでしょう。
だから、極力ご令嬢と会わぬようにしているのです。
静かに涙を流すなつかさまは陛下を想っているのか。はたまた人間界に残した人を想っているのか。
人に見せずただ静かに涙が頬を伝っていく、
小さな背中からはなにも感じれずに入れないのです。