「……な、何故このメイドを許すんですの…?」


何故。

何故、ときたか。

女子生徒たちの視線が、俺に刺さる。

何故、そうだな、それは。


「コイツ、うちのメイドだから」


途端。

奇声のような悲鳴のような、とにかくそんな、耳をつんざく声が響き渡った。

もちろん、出所は山田を囲んでいる彼女たちだ。

さすがに周りもそれに気づき、なんだなんだと好奇の視線をこちらに向けた。

めんどくさいことになった、と少しの後悔。


「こ、こんなチビッ子が久宮様のメイドですって!?」

「信じられないわ!!」

「そんなことが許されていいものなの!?」

「世の中狂ってるわ!!」


もはや発狂寸前、いや、もう発狂済みか。

ありとあらゆる嘆き声を上げる彼女等に、俺はひとつ、ため息をついた。


「……コイツは」俺が口を開くと、彼女たちは途端に黙った。「コイツは山田真子って名前だ、チビッ子じゃねぇ」


何言ってんだ、と自分でも思う。


「たしかに背は低いけど、仕事はきちんとこなす。いや、むしろやりすぎて困るくらいだ」


大理石を輝かんばかりに磨き上げ、俺をこけさせる程度には、困ってる。


「そして口が悪い、これは俺も注意したけど治らないし、今はこっちのほうがしっくりくる。こういうの、気軽っていうのか。コイツと話してると、楽しくてしょうがない」


思わずツッコミを入れてしまうくらいには、飽きない。