いつもの調子で言いながら、山田の頭に手を乗せようとした。

しかしそれは、


「ちょっとあなた!」


今まで唖然としていた女子生徒たちによって、遮られた。

ひとりの女子生徒が山田の肩を掴み、ムリヤリ自分の方へと振り向かせる。

山田は「おおう」と奇妙な声を上げ、トレイを落とさないようにバランスを取った。運動神経がいいのか悪いのか。

そんな山田に、彼女等のイライラは頂点に達したらしい。


「メイド科の方が、久宮様になんの御用!?」

「それになんて口のきき方!」

「メイド科は一体何を教えているの!?」

「私たちを押しのけて来るなんて、あまりにも失礼だわ!」

「私ならあなた、すぐにでもクビよ!」


あらゆる罵声と怒声が飛び交う。

山田を囲んで、彼女等は傍から見れば、さぞかしいじめっ子にでも見えたことだろう。

ただし、彼女等の言うことはもっともだった。

何故って、今の言葉は全部、俺も思っていたことだったから。

しかし、だからって自分の好きなヤツを罵倒されればいい気はしないし、むしろムカつくし、その前にコイツは言っても治らないし、別に治らなくていいし、治ったところで逆に気持ち悪いし、そんなのは山田真子じゃねーし。

まあとどのつまり、何が言いたいかって。


「そいつは、それでいいんだよ」


一言、俺が口を挟むと。

たちまち女子生徒等は、冷水を浴びたような顔でこちらを向いた。

俺は彼女等を見返す。

女子生徒のひとりが、恐る恐ると言った様子で、口を開いた。