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聖凰パーティーなんて言っても、所詮は高校生の集まりだ。

家柄の関係で出向くそれとはまったくもって雰囲気が違い、気を引き締めるまでもなかった。

服装や出で立ちこそパーティーという名のもと、見合ったものにしているが、しかし表情や会話はいつもの学校とそれほど変わったところもなく。

つまり、何が言いたいかって。


「お待ちしてました、久宮様!」

「何かご用事でもありましたの?」

「遅れていらっしゃるなんて珍しい!」


……こうやって、どこのクラスかも知らない女子生徒に絡まれるのも、また日常と変わらない、ということだ。

遅れていらっしゃるなんて珍しい、とはまあ、よく言えたもんだなと半ば感心する。

俺は別に時間にルーズなわけではないが、だからといって絶対に遅れないなんてこともない。

そもそもお前と待ち合わせなんてしたこと、あったか?


「……別に、何も」俺は言いながら、壁に寄り掛かった。「遅れることくらいある」

「そうなんですの?」と笑顔で応答する彼女等越しに、広い会場を見渡した。


大理石の床、でかいシャンデリア。

沁みひとつないクロスに覆われたテーブル、その上に載るのは豪勢な料理。

目を細めるほどに、きらびやかな空間だった。

そんな空間に居る自分を、鼻で笑い飛ばしたくなるくらいには。


「これだから金持ちは」という山田の声が反響した。

たしかに、これだから金持ちは。

己の周りを飾るばかりで、自分の内ほど真っ暗なのだ。