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家に帰ると、またしても山田の姿が消えていた。
大理石は滑らない程度に磨き上げられている。
絨毯も完璧だ。
じゃあまた迷子か、と思っていると、ひとりのメイドが「山田さんですか?」と声をかけてきた。
「あぁ、どこに居る?」
「お庭の手入れに行かれました」
今度は庭師の仕事を奪ったらしい。
俺は「……わかった」と空返事をして、階段を上る。
庭の手入れなら、まあ迷子になることも無いだろうし。
必要な花や枝を切り落とすこともなかったはずなので、今日はわざわざ行かなくても大丈夫なはずだ。
そう思いながら自室へ向かい、鞄をベッドに放り投げた。
制服のネクタイを緩めながら、そういえばここから庭が見えたなと思いだし、何気なく窓辺へ歩み寄る。
そして見つけた。
迷うことなく、それを見つけた。
別に庭が参事になっているわけじゃない。
どこもかしこも完璧なまでに整えられていた。
だから、ヤケに目立ったのかもしれない。
山田真子が、庭の隅で倒れている光景が。
認めた直後に部屋を飛び出していた。
今来た廊下を逆走し、階段も上から飛び降りる。
ちょうど近くを歩いていたメイドが、小さく悲鳴を上げた。