そう思うと、なんつーか、食べるのがもったいない気がした。

柄でもない。

今までどれだけ豪華な料理を出されて、どれだけそれを味わってきたか。

自分でも嫌と言うほどわかっている。たしかにどれも美味かった。

不味いものなんて食べたことがない。

当然のように美味しいものがテーブルに並べられる。

当たり前だと思っていた。


山田は朝が忙しいと言う。それは嘘じゃないだろう。

朝から掃除をして、ご飯を作って、それでも山田はきっちりと7時に、俺を起こしに来る。

加えて今日は、弁当まで作っているときた。


「……アイツ何時に起きてんだ…」


5時か、6時か。はたまた4時か。

考えるだけで頭が痛くなる時間だった。


「……山田ちゃんは良い子だな」


ぼそっと、宮埜がコーヒーをすすりながら言った。


「早く食べろよ。昼休みが終わる前に」

「……わかってる」


箸を持ち、朝の残りでないおかずを挟んで、口に運ぶ。

そこで宮埜が思い出したように、


「あーそうだ、お前の分のパン、もう食っていいよな」


真新しいパンの袋を手に持って尋ねてきた。俺は「食えば」とだけ返事した。


弁当のために作られたおかずが、無性に美味い。