「山田ちゃん、ホントイレギュラーな子だな」

「イレギュラーも甚だしいな」

「育成科でも一目置かれてるからね」

「変人すぎてか」

「まあ、変わってるってのもあるけど、それ以上に仕事ができるし」

「できすぎて困る」

「そして何より、久宮の調子を狂わせるプロでもある」

「楽しそうに言ってんじゃねぇよ。」


にやりと笑う宮埜が座る、椅子の足をガンッと蹴った。

その拍子にコーヒーがこぼれる。

「うわもったいな!」とか言ってる宮埜は、根っからの貧乏性らしい。


そんな宮埜は完全に無視で、俺は足の上に置いている弁当のふたを取った。

中身はごはんとおかず、2:3くらいの割合で仕切られていた。

ごはんは白ごはんで、おかずはたしかに朝の残りと、それに加えて違うものも入っている。

山田は『朝のおかずが残ったんで』とか言ってたけど、本当か疑わしくなってきた。

何故ならおかずに、朝の残りが一種類しか入ってなかったから。


「これまた美味そうな弁当だなー」


コーヒーの片づけが済んだらしい宮埜が、弁当を覗き込みながら感心の声を上げた。

確かに、美味そうな弁当だった。っつーか、ぜってぇ美味い。


「冷凍食品なんて皆無だな。全部手作りだ」

「なんでわかるんだよ」

「冷凍食品って一目でわかるもんでね……って、まあ金持ちの久宮にはわかんないか」


そう言って肩を竦め、宮埜は自分のチョココロネを一口かじった。

どうやらこの弁当、マジで手間がかかっているようだ。