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「……うわあ」
ドアを開けた俺を見て、宮埜の開口一番はそれだった。
「久宮、一応聞くけど、それなに?」
「見てわかるだろ」
「どう見ても弁当にしか見えないんだよ」
「なんで他の答えを見つけようとかしてんだよ。」
言いながら、いつもの椅子まで歩いて行き、腰掛ける。
宮埜はその間、俺の手に持たれた弁当から、僅かも視線を外さなかった。
今日も今日とて、部屋の中はコーヒーの安い匂いが充満している。
この時間はそれに加え、甘ったるい匂いも混ざるのがお決まりだ。
宮埜の昼飯は決まって菓子パンだった。
「久宮が弁当持ってくるとか超初見」
「俺も初見だ」
「なに、もしかして山田ちゃんお手製弁当?」
「じゃなきゃ持って来ねぇ」
ひゅうっと、宮埜が掠れた口笛を吹いた。
「いいねえ、好きな子のお手製弁当。青春だな」
「青い春の欠片もない雰囲気だったけどな。」
「贅沢だな久宮。女の子のお手製弁当なんて滅多にありつけないんだ」
「あぁお前無縁そうだもんな。」
「引きこもり楽しいなー」
「一生ひとりでこもってろ。」