「雪奈？その匂い袋くれるの？」
いつの間にか、棗は私の手の中にある色違いの匂い袋を指さしていた。
ドキ
私は、なぜか胸が高鳴った。
「うん！勿論だよ！貰ってくれる？」
私は、そのままオズオズと棗の前に匂い袋を差し出した。
結構綺麗に出来たけど、きっと雪さんの方が綺麗だったよね？
私は、自分の手の中にある匂い袋を見て軽く棗には、分からない位の溜め息を漏らした。
「勿論ですよ！また、こんなに立派な物を貰えて凄く嬉しいの！
ありがとう！雪奈！」
棗は、これ以上ないくらい笑顔で微笑んだ。
まるで、あの時のように優しく微笑んでくれたんだ………。
また、一つ記憶を取り戻せた。
私の頭の中には、棗の前世と楽しそうに微笑む雪さんがいた。
喜んで貰えて良かった。
私は、自然と顔が緩んでいた。
「慧祐にも渡すんでしょう？」
「え？」
棗は、笑顔のまま首を傾げる。
確かに慧ちゃんの分も作ってある。
だけど、棗みたいに喜んでくれるかは、愚問だった。
喜んでくれなかったらどうしょう。
．
