私は、大きく頷いた。



「慧ちゃんは、誰にも渡さないわ!私の気持ちでも…………そして、雪さんの気持ちでも。」



私は、棗を安心させるようにニッコリと微笑んだ。



棗は、一瞬驚いた顔をしたが直ぐにニッコリ微笑んでくれた。



『あの方を………あの女の人に会わせては駄目!
早く記憶を思い出して!』


頭の中で雪さんの声が響いた。



やっぱり、あの人関係がある人なんだ…………。



私の胸がズキンと痛む。



棗が不安そうな顔で見つめていたが棗の顔を見ることが出来なかった。



私は、首にかけてあった匂い袋に握り締めた。



すると、少し甘い伽羅の香の匂いが仄かに漂う。



「雪奈………それって匂い袋?」



棗は、不思議そうに私の手の中にある匂い袋を見つめる。



「うん……私が調合して作ったの…………どうしても、作りたくて
でも、作ったことなんて無かったのに…………不思議と作れたの………
ねぇ?棗………雪さんは、匂い袋を作ったりしてたの?」



作ってる時………凄く懐かしくて、落ち着けて、楽しかったから…………。



棗は、苦笑い気味に頷いた。