棗は、まさか慧ちゃんがいるとは、知らなかったのか慌てて口を押さえると
ドアにぶつかった。



「棗大丈夫?!」



私が慌てて棗に近寄ると何度も首を縦に振った。



そこまで驚かなくても…………。



もしかして、慧ちゃんに聞かれなく無いことでもあったの?



私は、無言のまま暫し棗を見つめた。



でも、その沈黙も長くは繋がらなかった。



「棗…………俺がいたらそんなに驚く事なのか?」



慧ちゃんが少し苦笑いしながら私達の方に近付いて来た。



「あっ!ううん!そんな事無いわ…………こんな時間だし
てっきり雪奈だけかと思っていたから少しびっくりしてしまっただけだから
気を悪くしたのならごめんなさい!」



棗は、ご丁寧にも頭まで下げた。



本当に、どうして棗は、慧ちゃんに対して敬語とかになるんだろう?
まるで、位が上の人に対しているみたい………
やっぱり、慧ちゃんは棗の前世の主だから………?



私が、そう思って二人を呆然と眺めていると、突然慧ちゃんが棗の頭を優しく撫でた。



ズキン



どうして、そんなに優しそうな顔をするの?