私は、慌てて慧ちゃんから顔を背けた。



流石にこれは、言っては駄目………あの女の事を慧ちゃんが知っているわけがない!



私は、そう思いたくて仕方なかった。



「雪奈?」



慧ちゃんが私の顔を覗き込んで来た。



「ねぇ?慧ちゃんは、雪さんを今も想ってる?」



でも、顔の表情を見られる前に私は、質問でそれを防いだ。



「え?!」



顔を見なくても私には、その顔が分かった。



どうせ赤くなって固まっているだろうなぁ~。



私が知らない記憶や思いがある…………その事が分かって悲しいんだ。



「雪奈…………お前突然何言ってんだよ。」



クスッ…………慧ちゃんったら少しキョドってるよ………。



「好きなんだよね……………だから私に記憶を早く思い出して欲しいんでしょう?
だから、夢の事も気になるんでしょう?
私の中に雪さんがいるから…………
でも、私は雪奈なんだよ?雪さんじゃあ無い………
雪奈だよ確かに雪ってつくよ?
でも、私は雪奈なの…………
それだけは、変わらないの……………。」



私は俯いたまま、それだけ小さく言った。