「棗!」



私は、慧ちゃんを押して棗を追おうとしたが、慧ちゃんが私を更に抱きしめたのでそれは、叶わなかった。


「慧ちゃん、離して!棗を追いかけないと!」



すると慧ちゃんは、首を振った。



「大丈夫だ……………アイツは強いから!それにお前の記憶が少しでも戻って嬉しかったんだろう…………………
ずっと一緒にいたが戻る見込みがないと思っていたからなぁ
どうして良いか分からなかったんだろう……………………
俺だってお前を抱きしめる以外に何も考えられない。」



私は、その言葉にただ頷いた。



私自身どうしたら良いか分からなかったから。



この匂いと、この体温にもっと触れていたい。



でも、私は気づいてしまったんだ。



慧ちゃんが思っているのは私じゃあ無くて、私の中にいる雪だと言うことに。



きっと私の事何か思っても居ないんだろうなぁ。



私は、そう思うと何だか悲しくなった。



「どうしたんだ?雪奈。」


私は、小さく首を横に振った。



「何でも無いの。」



「そっか…………。」



そのまま私達は、何も話さなかった。