ーーー… すぅ~ … っと、小さく
ひとつ深呼吸をした。


伏せていた目をゆっくりと開き、
…ぱちぱち。 まばたきを数回。




はらはらと舞う花びらに、


「…桜、きれい…。」


思わず感嘆の声を漏らす。



肌を撫でる風も、どこか優しくて、
ふわりと香る 春の匂いに
あたしは思わず頬を緩ませた。



藤咲 桃那、18歳。
今日から、大学1年生デス。

少し長い坂の上。
小高い丘みたくそびえる
某私立大にあたしは合格した。

そして今日は、待ちに待った入学式。
晴れて女子大生と呼ばれる門をくぐる日が
ついにやってきたのである。

カラカラと鳴る車輪の音も、
今日は一段と軽快に聞こえた。