その日から、ちょっとだけ進展があった。




《名前》



「…っあの!!」



調子のいい日だけ、たまに外に出ることを許される私は、その日は必ず、その男の子が見えるところへいく。

「…何?」


話しかけたは、いいんです。

何で話しかけたんだっけ?
緊張で頭が真っ白に燃え尽きる。


「あ、な、名前!教えてもらえますか!?」

「え…あ、俺は、魏麻龍真(ギアサ リュウシン)。いつも彼処の病室にいるやつだろ?」


魏麻…龍真。


それが、彼の名前。

それだけでも嬉しくて、胸が今にも張り裂けそうなのに


私のこと、知っててくれたから…


「あ!菫煜(スミレ ヒカル)です!煜で、どうぞ!」


「煜。宜しく!俺の妹の名前さ、魏麻 真夢華(マユカ)っていうんだけど、知ってる?」

「知らない…な。ごめんね。妹さん、別の病棟じゃなくて?それに私、たまにしか外出れないから…」

嘘みたい。

「そっかぁ。まぁ、いいや!!煜、いつもそっちの木の下にいるよな。」

普通に、こんなふうに話せるなんて。

「 え…知ってた?」

「うん。たまに見えるから」

相手だって、少しでも私の事を見てくれていた。

それだけで…

「幸せな気分になるんだ。彼処の桜、綺麗なの。」

「そーなんだ!!!今度俺もいれてよ!」

そういって、私の大好きな、優しくて力強く、純粋な笑顔を見せたせいだよ?


好きって気持ちで溢れきっちゃった。


「じゃ、俺いくね!また今度!」

「あ…う、うん!りゅ、龍真くんバイバイ!」


幸せな、一日だった。


それから私が外に出た時なは必ず一声掛けてくれるようになって、毎日毎日、好きが増えていった。