数分ほどたつと、クラスのみんながゾロゾロと教室に入ってきた。
知らない人も中にはいて、なんだか一人でワクワクしていた。
「んじゃあHR始めるぞー」
先生が勢いよくドアを開けて教室に入ってきた。
一応、新学期ということで先生も張り切っているみたい。
あたしは終始、ぼーっとしていた。
ちょうど窓際の席だったから、何をするでもなく窓の外を眺めていた。
しばらくすると始業式が始まるようで、みんなが体育館へ移動をはじめた。
体育館へ移動する間、何故か雄太と目があった。
目があったと思えば雄太がニコッと微笑んだ。
あたしも頭の上にハテナマークを浮かべたまま微笑みかえした。
なんだったんだろう?
まぁいいや。
なんてことを考えていると始業式も終わりに近づいていた。


教室に帰り、またすぐHRが始まった。
今日は高校2年生になってまだ1日目。
だから授業はないらしい。
HRが終わり、帰りの準備をしていた。
「ごめん蘭っ!今日部活のミーティングがあるらしくて・・・」
深咲が顔の前で両手を合わせながら走ってきた。
「いいよ!頑張ってね」
「また一緒に帰ろうね!」
深咲は手をヒラヒラさせながら、また走り去って行った。

よし、水やり行くか!
水やりっていうのは、もちろん花の。
あたしは、ちっちゃい頃から花が好きで、部活も園芸部に所属している。
唯一あたしの名前に入っている「蘭」の花。
あたしは、花はだいたい好きだけど何故か「蘭」の花だけは好きになれない。
「蘭」の花言葉って知ってる?
“美しい女性”
“優雅な女性”
名前はその人を表すってよく言うけど、あたしは違うと思う。
あたしは“美しい女性”でも“優雅な女性”でもない。
いたってフツ―の女子高生。
「蘭」の花の思い出といえば一つだけ。
よくない思い出だけど。