「お、アサヒ食堂のサエちゃんじゃないの」

バスを降りようと、電子カードを台にタッチしていると運転手に声をかけられた。


「え、えと……」


「今日はお休みかい」


ニコニコと愛想良く話しかけてくる運転手に、私は少し困惑した。

口調からして向こうは私の事を知っているみたいだ。

しかもアサヒ食堂で私が働いていた事を知っていると言うことは、
たぶん店のお客さまだ。


「実は昨日で辞めたんです」


私は誰だか分からないが、バスの運転手兼アサヒ食堂のお客さまに返事をした。


「えーそうなの、そりゃ残念。寂しくなるねぇ」


「はは、有難うございます」


「昼飯にアサヒ食堂行くとさ、いつもサエちゃんが太陽みたいな笑顔で接客してくれて、すごいパワー貰ってたからねぇ」


いつも……常連客だったのか、この人。