少し湿気を帯びたリュックサックから、携帯電話を取り出し、乗り換え情報をチェックする。

2駅通りすぎてしまったので、6分後にくる各駅停車沢見行きに乗る事にした。

小さい傷が無数についたブルーのベンチに座る。

実南雲は工場地域で、外国から出稼ぎに日本へやってきた外国人が数多く住んでいる所だ。

灰色に染まった空と、無機質な大小の四角い建物は一体化し、距離感があまり感じられない。

ずっと見ていると不安な気持ちが無くなっていく様な気がして、私は灰色に統一された景色を見つめた。


「あの、すみません」


ぼんやりとした意識の中、聞き覚えのある声が横から私を灰色の世界から、傷だらけのブルーのベンチの世界へと引き戻す。