自然と下を向いて歩いていた。

暗く黒い足元は前へ進めているのかどうか分からなくなる。

家を飛び出すには軽すぎたリュックサックのかたひもを両手で強く握る。


「寒い」


桜の花が舞い落ちる季節。

なのに震えるほどに寒気がした。

私は寒くて気持ちが悪くなり、歩道の片隅にうずくまった。

出来るだけ身体を丸めて座っていると少し楽になる。


……少し、少し休もう。


私はゆっくりと瞼を閉じ深く息をした。