ドアが閉まり、電車はゆっくりと動き出した。

ガタン、ゴトン――と揺れながら加速していく。

一般席の隅に座り、窓の外を流れる景色を私はぼんやりと見つめた。

中小企業のビルやデパート、スーパーなどの建物が、右から左へと過ぎていく。

昼間の日差しが見え隠れする。

車両に差し込む日差しは、眩しく少し暑い。



……もうすぐ夏がくるんだ。


チクリと刺さる記憶、思い出。

私はカーテンを引っ張り、夏の訪れを知らせるそれを遮った。


ふぅ、と一息つき目を閉じる。




……4年前、沢見へやってきた時の事を思い出す。



家を飛び出してこっちへやってきた時、辺りはもう暗くなっていた。

感情に任せて飛び出した私は、泊まる場所を探すのに苦労した。

駅周辺にあったビジネスホテルにしようと思ったが、当時15歳だった私がひとりで入っていったら、警察に連れていかれ、家に連絡されてしまう可能性があると思い断念した。

ふらふらと静まりかえった商店街を宛もなく歩き、気付けば街灯が少なく、民家も転々とした暗い夜道を歩いていた。