「琴さん。」


突然の桔梗の呼びかけに琴はハッとする。
桔梗は携帯をいじるのをやめて窓の外を見ていた。


「左右と後ろ囲まれてます。車は全部黒で統一されてるみたいですね。」

右を見て、左を見て。
バックミラーを見た。

五台ほどの黒い車が、びったりと琴と桔梗が乗っている車についてきていた。

数秒の沈黙の後、琴は叫んだ。


「お前ボーッとしてねぇで何かやれし!」

「弾切れなんですよ。」

「ホンット使えねぇ!」


車は急加速。
どこに行き着くのか見当もつかないまま、走り続けた。