「今はまだ休戦ですよね?」

「そうだし。政府の奴ら見境なく殺しにかかってくるし。」

今思い出しても腹立つな、と琴は一番始めに出会ったサングラスの男を思い浮かべる。
殺しはしたから一矢報いたことにはなるだろう。
だが、あの時の余裕のなさが口惜しい。
もう少し苦しめてから殺せばよかった。

ギリッと歯で唇を噛んでから、はたと気づいた。

これが本性なのだ。
いくら平和で塗り固めたとしても、琴の本業は殺し屋で。

どんよりとした気持ちになった。

いつか愛想を尽かされて一人になってしまう自分の姿が容易に想像できて、胸がスッと冷えていく気がした。

だが琴はすぐにそんな考えを打ち消し運転に集中する。
頭を振り隣の桔梗を見た。

彼を見るたびに胸に何かつかえるような気がする。
成り行きで盗み聞きしてしまった鉛丹の秘密のせいだろう。