道路に散乱しているバナナチップスを呆然と眺めていたら、唐突に誰かに腕を引かれた。


「行くぞ。」


聞いたことのある声だ。

だがすぐには思い出せない。
顔を上げる。

ビー玉みたいな茶色い目と合った。


「あ・・・。」


何か言う前に、ものすごい力で引かれた。
そのまま車に押し込まれる。
しかも、黒い車と衝突してあちこちヘコみまくった白い車に。

入った瞬間に感じたのは、血の匂い。

後部座席に押し込まれる。
そこにはすでに、淡い茶色のカーディガンを着た真面目そうな青年がいた。
彼もまた茶色いビー玉みたいな目をしている。


「食べますか?」


そう言いながら彼はバナナチップスを差し出してきた。

そうだ、バナナチップスは本来食べるものであって、空から降ってくるものじゃないよな。

たくさんのことがありすぎて、情報を処理しきれない。



なんだかよくわからないが琥珀は一応バナナチップスを受け取っておいた。