「あの方が幸村様………。」


私は幸村様の部屋を出て、ぽけ~と廊下を歩いていた。


やっぱり凛々しくて、かっこいい主君の方が働き甲斐があるね!


今日の気分は最高だ。

仕えて初日に忍務をもらったし、幸村様はいい方だし!


そんなことを考えてご機嫌だった。

「何考えてんだ……梓は。」

そんな私の様子を隣で、嫌なものを見るような目で佐助が言った。


「いいなぁ、佐助は。」

「何が?」

「だって、幸村様に10歳の時から仕えてるんでしょ?」

「あぁ。まぁ、正式には6つの時からだけどな。」

「嘘っ?!初耳だよ!」


え、6つの時から?!

なんで?その頃は私たちと修行中だったじゃん!


「そうだろうな。仕えてはいたけど、未熟者だったから里に残って修行したんだよ。」

「そうだったんだ……。」


……佐助は努力してたんだ。

あの当時でも十分佐助は強かったのに…

だから私たちと修行してたんだ…

だいぶ佐助を見直したよ。


「え、なにこの雰囲気。俺のせい?!」

「いや、違うの!ただ、ちょっとあんたを見直しただけ。」

「へぇ。梓でも人のこと褒めるんだ。」


……カチンっ

何か頭のなかで切れた音がした。