*佐助side*
いっけねぇ……。
真田忍隊の長であろう俺が、油断するなんて。
そう思いながら、腕と足をを力任せに動かし、壁から離れる。
……そのせいで、右の肩の部分が裂けてしまった。
誰がこれを繕うんだよ………。
自分じゃ出来ないからなぁ。
「面倒くせぇことさせんなぁ、梓。」
そう独り呟いた。
……いや。梓のせいじゃない。
俺が油断したからだ。
あの時の梓の表情………。
本気で俺のことを見直した顔だった。
…嬉しかったのに、憎まれ口を叩いて梓を怒らせた。
自分で抜け出せたのに、梓に助けを求めた。
何でだ?何でだ?
俺は真田家の忍を統率する忍頭だぞ?
幼馴染みごときに助けを求めたんだ……?
「どうしたんだ……俺……。」
自分で分かってる。
“どうしたんだ”なんて滑稽だな。
俺の知らない間に成長した梓。
髪も背丈も伸びて大人らしくなっていた。
何もかも、アイツは成長してたんだ。
俺はそんなに鈍いヤツじゃない。
自分の気持ちぐらい少しは気付いてる。