「ねぇ、稚里〜。一緒に行こうよ〜」
『……』
「2人だけだと緊張して何も話せないんだよ〜」
腕に縋り付いてくる琴音を“可愛い”と思いつつ、隼人にもそうやって素直にくっつけばいいのに…と思ったり。
『……面倒くさい』
「ちーさと〜」
だって、どこ行くにしても人は多いし。まず暁斗が遊園地に行ってはしゃいだりとか……想像つかないし。
とりあえず、あたしも暁斗も人混みは嫌いだし。
「暁斗くんと仲を深めるチャンスだと思ってさっ!」
『……2人で行ってきなよ。あたしはこの通り、夏バテ中です』
そう言って再びソファーに横になろうとしたら、ぎゅっと服の裾を掴まれ驚いて琴音を見た。
「お願い稚里…一緒に行って…?」
『……』
涙目で首を傾げる琴音。
…せこい。そんな可愛くおねだりされたら断れないじゃん?てゆーか、誰にそんな技を叩き込まれたの?
『わ、わかったよ…行けばいいんでしょ行けば…』
「わーっ!稚里ならそう言ってくれると思ったーっ」
さっきの涙目から一転、ぱぁっと顔を輝かせて抱き着いてくる琴音。
……うん、女って怖い。