そこには自転車のサドルにまたがった、緑の着物の男性がいた。


 彼は僕が振り向くとニコッと笑い、


「君は随分とここのお店を気に入っているようだ。そうだろう?」


 僕に声をかけて来た。


 あまりに唐突な質問に僕はしどろもどろのてんてこ舞い……な心境。


 慌てて口から出たのが、


 「ぇえぇえと、はい、そうです!好きなんです!」


 すると男性は、


「やはりそうか、そうであったか」


 とさらにニコニコし始める。


 愛想笑いで僕もニコニコしてみる。