「もし良かったら、私、出るよ?病院行きなよ」

 幸枝がゆかりの肩を、ちょんちょんと触った。

 「いい!行かないから!病院!!」

 幸枝が触った肩を、振り払う様な格好をし、ゆかりは幸枝を睨んだ。

 『…面倒くさい、この人…子供みたい』

 ジッと幸枝とゆかりの目が合っている。心の中で、ゆかりに対して、どんどん嫌悪感が増してくる。

 「いいよね〜川口さんは!パートだし、子供の用事って言えば簡単に休めてさ!羨まし〜♪」

 幸枝は黙っていた。
言い返したいのは山々だが、何か言えばまた、面倒くさくなるので我慢していた。

 「高橋、じゃあ明日、休んでいいから、病院に行って来なさい」

 ホワイトボードへの記入が終わったらしく、幸枝とゆかりの席まで部長が来た。

 「いいんですか?」

 上目遣いで、ゆかりが部長を見る。

 「ああ。これからは川口さんみたいに、ちゃんと前もって休みを取りなさい。いいね?」

 「はぁい…」

 ゆかりの顔が一瞬、ニヤッとしたのを幸枝が見た。