おせち弁当の入った重たいリュックを、冗談ではなく、ほとんど引きずりながら、憂鬱な気持ちで遠足に出かけた私は、昼食時に友人達に「これも食べろ。あれも食べろ」と弁当の中身を分け与えました。
 しかし、小学生の食欲にも限界があります。五人がかりでも、おせち弁当は食べきれなかったのです。私は思案の末、残ってしまった弁当の中身を、野良犬にくれてやることにしました。犬が食べた後にはチューリップの骨、うずらの卵が刺してあった爪楊枝、エビフライの尻尾などを慎重に回収して弁当箱に戻し、あたかも自分が食べたように偽装し、やっとの思いで、伯母に空の弁当箱を返すことができました。