もし、違う形で夏希に逢っていても俺は夏希を好きにならなかったかもしれない。


いや、逆に好きになっていたかもしれない。


今となってはそんなこと分からないけど、俺は教師になったことを初めて後悔した。


教師だから、好きと言えない。


ただ黙って見つめることしかできない。


たった2文字、好きって言えないことの苦しさ、分かるか??


いつも近くにいるのに、


いつも傍にいてやれるのに、



俺は教師だから言えない。


言っちゃいけない。


もう傍にいても苦しくなるだけなんだ。


夏希の笑顔を見るたびに胸が締め付けられた。



ここだけの話、我慢できなくなって言ったことがあった。


夏希の寝顔に好きだ、って。



ヤバイだろ??


重症だろ??


笑えるだろ??


こんな俺が教師なんてしてちゃいけないんだ。


でも俺はこの職業が好き。


だから教師を辞めることはできなかった。