「ヒック…ヒック…」




階段で一人、泣いていた。
大好きな人に裏切られ、何もかも失ったことに今気づいた。
当たる雨が冷たく、
だんだん暗くなるし、寒くなっていた。




「しゅんとの思いで全部…消した方がいいよね。」

『消さない方がいいと思いますよ。』

「…!?先生…」




ただの独り言だったのに、反応してくれちゃった。
先生は、天使の笑顔で、私に傘を向けてくれた。




『振られたんですね。さっきから独り言でぼそぼそ言っていましたよ。』

「…もっと複雑なんですけどね。」

『ちゃんと現実に向き合ってください。そしてしゅんたさんとの思い出は、けして、悪いものじゃないと思います。』

「先生…っっ。」

『泣かないでください。とりあえず今日は家に帰って、落ち着いてください。今度詳しく聞きます。』




天使の笑顔で言ってくれたその優しい言葉がいつまでも頭を巡ってた。
これが先生との本当の出会い。