「親父、これ学校の書類なんだけどサイン···」
ここは、忙しい父、OMZカンパニーが当主凰命寺旬之助の書斎。
「ああ、桃哉か。今忙しいんだ。池澤にでも頼んでくれ。悪いな···。」
-いつもそうだ。いつだって親父は···。仕事だなんだ言って結局子供に無関心。ただの取引目当てで結婚した女とできた俺じゃぁ、そりゃ愛情もない、か···。
桃哉は部屋に戻りベットにダイブした。そして呼鈴を鳴らし桃哉の専属執事である池澤を呼び出した。しばらくして扉を叩く音がしたからてきとうに返事をして中に池澤を入れた。
「桃哉様。お呼びですか?」
きっちり膝まづいて俺に用件を聞く池澤。
「ああ、たいしたことじゃねーけどこれにサインよろしく。」
さっきの書類を指差してそう命じた。親父の代わりに···。
「かしこまりました。」
そういって素早くサインを済ませると、失礼しますとだけ言って部屋から出ていった。
桃哉だけとなった部屋に静寂がながれた。
暇になった桃哉は遊び相手を探すために携帯をいじりだした。
自分を愛してくれる人が欲しい。心にポッカリあいた穴を一時だけでいいから埋めたかった。結局みんな自分のことしか頭にないんだ···。
そんなことを考えながら天井を見上げた。あぁ、会いてぇよ、
「母さん···。」
桃哉だってまだ中1だ。いくら大人ぶったって親が欲しい、自分を愛してくれる、大切にしてくれる親が。もうとっくに枯れたはずの涙が俺のほほをつたいシーツに小さなシミをつくった。
俺は家が大嫌いだ。だから中学までは我慢するけど、高校になったら寮のあるところに行く。あと2年···。それだけまてば俺は自由なんだ。
自分に言い聞かせるようにしてかつて母にもらった青い勾玉のペンダントを握りしめ、そのまま眠りに落ちた。