けれど、


「なにこれ超可愛い!」


小野さんはあろうことか勢いよくわたしの体を抱き寄せた。

っ!
声も出せないで驚く。


すりすりと頬を擦り、小野さんは、わたしを強い力で閉じ込める。



助けて助けて春近さん



思っていると、「いったー!」という小野さんの声がして、涙を浮かべて小野さんはわたしから離れた。


春近さんが、小野さんの頭に手刀を落としたらしい。



「小春さんは僕のだから、」



春近さんはそう言って、わたしの手を握り踵を返して歩きだした。



「こらこら春近、俺と彼女の交友関係を邪魔するなー」


小野さんはそんな春近さんを追って、隣に歩く。
わたしは、春近さんに隠れながら歩いた。


春近さんは、初めて会った日みたいに無表情に近い。

笑って欲しいのに。



「で、なんで二人は仲いいわけ?まさか許嫁?」

「はぁもう本当黙って。」



小野さんに少し冷たい春近さん。春近さんを見上げれば、春近さんと目があった。優しく緩められたその視線。


春近さんは、やっぱり優しいから、好き。





そして、お父様は、職員会議だったみたいで、
結局小野さんに傘を預けて、わたしと春近さんは学校を、後にした。