「……あたしの気持ちは、5年前からずっと変わってません。
 もちろん、これからも変わるつもりないです。
 ……その人とは、いろいろあって。
 いつか、会える日を待ってるんです…」


拓馬くんのことになると、やっぱり…勝手に涙が溢れる。

俯きながら、必死に声を振り絞った。
そして、拓馬くんとの出来事をゆっくり話す。


「…彼とは、もう会われへんかもしれへん。
 簡単に会える程、あたしたちは近くない。
 でも、あたしは待ち続けます。
 だって、大切な人やから…」


話し終えても、中々顔をあげられない。
どんな顔すればいいんか…分からん。

しばらく俯いていると、優しく抱きしめられた。


「きついこと言うかも知れんけど…聞いてや。
 …お前は、甘すぎる。
 待ってるとか、えらそうなこと言うな。
 身を引くのも大事やけどな、それでいいんか?
 相手のことばっかり考えて、自分はどうやねん?
 ずるずる時間、無駄にして会われへんかったときの方がつらいんちゃん?
 どんなけ待ったかて、そいつが償い続けらなあかん時間は一生や。
 それやったら、そばで支えたれや…」


「そばにおったら、きっと…邪魔やよ」


「邪魔扱いする程度の男やったら、俺が殴りに行く」


顔を無理やり起こされ、額にキスされた。


「……行ってこい、頑張れ。
 5年分よりも、一生の方が長いんやから」


「………っありがとう」


晴樹は、梓紗の瞳から流れる涙を拭う。
そして、笑った。