・・・何、最後の吐き台詞

そして部屋には2人きり

呼吸の音がはっきりと聞こえて、

耳が熱くなった

なんでだろ・・・

もしかして緊張・・・してる?

私・・・

「おい」

沈黙を破ったのは彼だった

「お前さ、俺の事も名前で呼べよな?」

「名前・・・」

彼の名前・・・

大地・・・

だい・・・ち・・・

なぜか口パクで

声に出さずに言ったにも関わらず

顔が熱くなるのがわかった

「呼べよ、名前」

向かい側のソファーに座っていた彼が

私の隣に来た

横を振り返ると、

目がバチっと合ってしまった

気まずくて、とっさに下を向く

は、恥ずかしい・・・

「なに恥ずかしがってんだよ?」

≪ドキッ≫

彼が私の顔を覗き込む

私は顔を背けた

恥ずかしくて

まともに見る事が出来ない

なんで、なんで私、

こんなに意識してるの・・・

や、こんなこと心の中で呟いてても

彼に丸聞こえされてるだけだ・・・

「大丈夫だよ、
 お前の心の声、聞いてねぇから、
 透視してねぇよ」

「・・・ほんと?」

「あぁ、こう見えても、
 ちゃんとプライバシーとか守ってるし、
 第一、一々誰かかんかの
 心の声に耳傾けてたんじゃ、疲れちまうし」

「あの・・・」

私は彼に向き直る

でも依然として心臓は

私の口から飛び出そうだった

「ありがとう・・・」

思わず口から出た言葉はコレだった

「私の事、気にかけてくれたり・・・
 入学式の日に助けてくれたり・・・
 前だって
 いろいろと・・・」

「別にいいぜ、好きでやってんだからよ」

好きで・・・やってる・・・

「俺、お前の事、信じてっから、
 だからお前にも俺の事、
 信じてほしかっただけ」

私の事・・・信じてくれてる

・・・彼は・・・

「名前・・・呼び捨てじゃ、
 呼びにくいから・・・だから・・・」

彼は私の震える声に対して

優しく耳を傾けていてくれた

「大ちゃんって呼んでも・・・
 いい・・・ですか?」

そう、これが私の精一杯

私の言いたかった事

「ははっ、いいぜ、
 お前らしくて可愛いと思うぜ、
 じゃ、そう呼べよな」

彼はクッシャっと顔を寄せて笑った

くすぐったくて、嬉しかった

「ま、この体格でそんな呼び方は、
 あんまされねぇーけどな、
 デカ男よかマシだぜ」