たんたんと時間が過ぎ、残り10分になっていた。
が、まだ同点のまま。
このまま引き分けでなんか終わりたくない。
ましてや負けるなんて絶対いや。
俺はひたすら1つのボールを追い掛けた。
『1点は必ず貰うぜ』
仁は俺を見てそう言った。
『その台詞そのまま返す』
人と関わる事が苦手。
話す事が苦手。
だけど珠蘭と鈴空は違うんだ。
喋ってたらなんだか笑顔になれるんだ。
可笑しな自分だと正直思った。
でも、俺は今の俺が好き。
負けたくない。
あいつのために。
自分のために。
チームのために。
『光舞!頼んだ!!』
俺のもとに飛び込んだサッカーボール。
皆の気持ちがたくさん詰まった、たった1つのボール。
『わかった』
小さな声でそう呟き、ボールをゴール目がけて蹴った。
─光舞Side─ E N D