「お前しか見えねぇ」
会社では冷静だと良く言われる俺が、梨華の前だけは冷静でいられなくなる。
それは、お前が…梨華が好きだから。
梨華が大切だから。
「……ありがとっ」
「あ?」
何故か俺の前の女はにっこりと笑った。
……意味が分からない。
礼、言われることした?俺。どっちかって言うと、格好悪かったと思う。
「…嬉しい!裕二の気持ちが聞けて。」
周りの雑音がすべてクリアになったように、梨華の声が胸に響く。
「………」
こういう時、なんて返事したら良いわけ?
顔が怖いくらいに熱くなる。それに比例し、そまる頬。
俺はそれを隠すために梨華をまた、腕の中に閉じ込めた。